行くよ

よしきと言います。1994年生まれ 大学卒業後、製菓の仕事、福祉の仕事を転々として いま現在フリーター。

話を戻します。

夕暮れ
熱いお茶を飲んでから、おじいちゃんの家に 炭焼きと、麦わら帽子、台車を返しに行きました。

「上がってけ。」と おばあちゃん。
「うん、おじゃましまーす。」と僕。

そのまま、
仏壇にお線香、そして、チーン。(無知、お恥ずかしい。)

僕「あ、ドライフラワーって どうやって作るの?」
祖母「何でや、何するの?」
僕「いや、ちょっと 作ってみたくて」

祖母 仏壇の方を指して、
「そこにも、あるでしょ。」と 花瓶のドライフラワーを指す。

「えっ、これも、ドライフラワーなの?へー、そうなんだ。」と僕。

「何という名前の、花なの?」
「知らね、赤、紫、青、色んな色があんだ。こんど、買ってきてみたら?」

「ラベンダーって、いい香りするの?」
「するよ、ほら、秩父のラベンダー畑、行ったことあんべ?」

僕「そういえば、いなげや にあったお花屋さんなくなっちゃったよね?いま、どこを使ってるの?」
祖母「そうなんだよ。あそこ、知ってるか?あの、四角公園を上に上がっていたところの。そこの裏に 酒屋さんが、あんべ。そこの前のところで、いまは 営業してんだ。」

おじいちゃんが、地図を書いている。

「ラベンダーとか、売ってるのかな?バラで」と僕。
「売ってんべ。その辺のビックーエーにも。10円くらいで。」と おじいちゃん。
「売ってありっこねぇじゃねぇか。」と おばあちゃん。
「庭の植木鉢で、おばぁがラベンダー育てたんだよ。こーんなに、たくさん。」と、手いっぱいに広げるおばあちゃん。
「でも、枯れて 全部切っちゃったんだ。」

「水くんねぇ、からだよ。、じぶんばっかり、水くれて。水飲まねぇと、花だって死んじまうんだ。ハハハハ」と おじいちゃん。
「うるせぇなー、このヤロー。」と おばあちゃん。

「また、この おじさん。戻しちっまったんだよ。」手を吐くポーズのおばあちゃん。
「えっ、また、お葬式の席で、飲みすぎちゃったの?ハハ」
「ちがうんだよ、車酔い。」と おばあちゃん。
「だって、すぐ、近くでしょ?みずほ台のあたりじゃん。」
「ダメなんだよ、このおじさん、ほんと。」

でも、お風呂に入り、これから一杯やるそうです。

 


蚊取り線香の香る、この部屋で、
おばあちゃんが部屋に入ってくる。

神のおばさんが亡くなって、昨日と今日は
お葬式で 二人とも クタクタに疲れている。

千葉のおじさんも、こちらの家に明日まで泊まっていくみたいだ。

「もうね、ほら、蚊に また、刺されちっまって。ほら、みてみ。」とおばあちゃん。
「俺なんかなぁ、蚊が こっちに寄ってくんだろう?そしたら、蚊の方から、落っこちていくんだ。ハハハハ」
ハハハハ と 笑う。
「バカみてぇ!」とおばあちゃん。

テレビの番組を笑点に変える、おじいちゃん。

「よせやい、いま、相撲、見てたんだろう。おつねさんが(千葉のおじさん)!」と おばあちゃん。

「え?見てたんか?」と おじいちゃん。

「そうだよー!、ほんと 嫌になっちゃうべ。毎日、毎日。朝から 昼から。野球やら、プロレスやらべー、観て」と おばあちゃん。

「なら、これに するか!」と、おじいちゃんが TBSの夕方のニュース番組にする。

そこには、天皇陛下のニュースが流れていた。
「もう、80 何歳なのに、偉いなぁ」と、みんな。
「この二人の夫婦は、ケンカとか しないのかね〜?」と ニタニタ笑う僕。
「しないだって。仲良いんだよ、この二人は。」と おばあちゃん。
「こっちのおじぃが、天皇陛下になったら、大変だぁ」と おばあちゃん。
おじいちゃん、笑う。

 

帰り際、財布を後ろポケットに入れている僕に おじいちゃんが、「財布、失くすなよ。」


そういえば、八郎さんではなくて
もうひとりの
無口で、器用なおじいちゃんは
お花屋さんだった。

東京オリンピックで、天皇陛下の席に添える花束を作ったと、誇らしそうに話していました。

そのおじいちゃんは、少しボケていて、
老人ホームにいます。

僕が行くと、子供のように涙を流す。

一度だけ、真夏の入院中に
10km離れた病院まで、
自転車で遊びへ行きました。
谷川俊太郎さんの「生きているということ」という詩を添えた手紙を書いて渡した時。

涙を流しながら、
「昨日の夜 夢を見たんだよ、誰の夢だと思う?」
まず、泣くおじいちゃんをはじめて、見たものだから、驚いた。

驚きを隠し、
「知らない、亡くなった おばあちゃん?」

「お前だよ。」

「はいっ、ごめんなさい。検査があるので、お孫さん、出てくださいね。」と ナースコール。

下をうつむきながら、ちり紙で鼻をかむ おじいちゃん。